「買わない人」が増えているということは、そこに買わない人が求めている新たな需要が潜んでいることを意味しています。
「売れない」と諦める前に、真逆のマーケットをねらって商品やサービスを開発してみるとヒット商品につながる可能性は十分にあります。消費者の求めるモノは変わり続けます。逆転の発想をすることによって実際に顧客のすそ野が広がったり、ヒット商品につながったりします。
少し前(H26年6月20日)の日経MJの記事(中本千晶さんのレビューれびゅー)ですが、カフェサルバドル丸の内店さんの取組をご紹介しましょう・・・。
朝劇を主宰する右近良之助氏は「1ヵ月でも続けば」という思いで始めたそうです。そんな試みが今も続く背景には3つの「逆転の発想」があるそうです。
まず、「夜でなくて朝」。
演劇と言えば、普通は夜のものです。米ニューヨークのブロードウェイや英ロンドンのウェスト・エンドなどでは仕事を終えてから芝居を見て、その後ゆっくり食事でも、というのが定番の楽しみ方です。昼型の観劇が多い日本でも演劇と朝は結びつきにくいのです。ところが朝の観劇を体験すると、夜の観劇で忘れがちだった本質的な力、「見る人を元気にする」という魅力を再発見できるそうです。
2つ目は「演劇街でなくビジネス街で」。
丸の内は帝国劇場などがある日比谷に近いとはいえ、やはりビジネス街の印象です。「丸の内で芝居をやるの?」という驚きとともに、ビジネスパーソンにとって演劇が身近になった感があります。
3つ目は「カフェを舞台にリーズナブルな値段で」です。
劇場での芝居は制作コストがかかるからチケット代も安くはありません。しかし、カフェサルバドルに行けば、飲み代より安く演劇を体験できます。店が舞台だから舞台セットがいらず、朝の日差しがあるから照明も不要です。シンプルだからこそ、様々な挑戦もしやすいそうです。
朝劇は「観客参加型」へと発展する可能性もあります。
プロの役者の発声や機敏な動き、観客を巻き込む力は、プレゼンテーション能力や組織力を高める「ファシリテーション力」を磨きたいビジネスパーソンにも学ぶところは大きいはずです。ワークショップ形式にすれば、そうした層の関心も引き付けられるでしょう。
世の中には「芝居を見る人」と「見ない人」がいます。朝劇は見る人をもっとひき付ける魅力、見ない人にはハードルを越えさせる力の双方を備えているようです。見ない人を見る人にいかに転化させるかは演劇ビジネスの永遠の課題です。朝劇はその課題をクリアする可能性を秘めた新たなスタイルといえるでしょう。