「おもてなし」マーケティングのはなし 2 DM・地酒勉強会を軸に交流を深め常連客をつかむ

少し前(H26年6月5日)の日経MJの記事です。

古民家風の内装が特徴の居酒屋「呑み食い処 なかぐろ」(仙台市)はJR仙台駅から10分ほど歩いたビルの2階にある。店の目玉は、きき酒師の資格を持つ店主が厳選した日本酒と創作和食だ。落ち着いた店内で、日本酒と料理をゆっくり楽しみたいお客が多く集まる。お客の7割がリピーターだ。

以前の「なかぐろ」は個性に乏しい普通の居酒屋で、集客の目玉を用意するのに苦労していた。そこで・・・。

店主は、以前から好きだった日本酒が目玉の店に変えようと決断。東北地方の地酒を出す店は周辺に多いので、扱う酒を東北より南の蔵元に限定することで競合店との差別化を図った。

このリニューアルが成功して、徐々にお客が集まるようになった。経営を安定させるには、新規客をリピーターにすべきだと考えた店主は、DMの発送と、お客と近い距離で交流できる日本酒の勉強会の2つを軸にして、営業時間外にも店を思い出してもらうリピーター拡大策に着手した。

(1)DMの発送

①DMを出すため、まず新規客との名刺交換に力を入れた。お客から受け取った名刺の裏には容姿や注文した料理などを記入し、お客の特徴を覚えることにも活用する。

②集めた名刺の住所に年始、春、夏など年3回程度、毎回250~300人にDMを送る。しばらく来ていないお客のDMには「ご無沙しております。その後、お変わりありませんか」など相手に合わせたコメントを書くので、DMをもらったお客は「覚えてくれてるんだ。久しぶりに行こうかな」という気分になりやすい。

③その効果でDMを送ったお客の4分の1が再来店するという。「前回の注文を覚えておいて、座った直後に『まずは瓶ビールでしたよね』と言ったり、領収書の宛名をすぐに書けたりすると、お客様との関係が深まる」と店主は語る。

④DM持参で来店したお客には、お礼として日本酒を1杯サービスしている。

(2)日本酒の勉強会

店の定休日に年6回開く日本酒の勉強会も、通常の営業とは別にお客と交流して、関係を深める重要な機会だ。普段の営業中は飲まない店主だが、この会ではお客と一緒になって酒を楽しんで感想を語り合う。

会費は5千円~6千円だが、告知した2日後には予約で満席になることもある。毎回15人前後が参加し、半数を店の常連が占める。

この会で、店主はお客の率直な感想を聞き、酒の好みを把握。そのお客が来店した際に、似た味の酒を薦める。それによって、お客からは自分の好みを熟知している店主として大きな信頼を得ている。

一つひとつは地道な作業だが、これらを継続することで店主はお客と密に交流し、「友達のように信頼できる関係」を築きあげている。

「大雪や台風でも、わざわざ来てくれるお客様がいるので、売り上げの浮き沈みが少なくなった」。店主は今の方針に自信を深めている。