少し前(H26年1月7日)の日経MJの記事(榎本博之さんの「アゲる!店づくり」)です。
初めての店に入るとき、
多くの人が何らかの抵抗感や緊張感を持つものです。
特に、入店時に店員と直接視線が合ってしまうと、「何か(無理やり)買わされるのではないか」「いきなり接客されそうで嫌だな」と、気まずさを感じやすいものです。その場を立ち去りたい衝動に駆られることがあります。
これらの要因で、「人がいると入りにくい」という認識を持っている店舗は少なくありません。果たして本当にそうなのでしょうか?事例とともに検証してみましょう。
東京・上野の駅ナカ施設「エキュート」内に、株式会社ユニエイが運営している「SHOES & BAG REPAIR」というお店があります。名前のとおり靴屋バッグの修理を行っているこの店舗の右側には小さな窓が設けられ、前を通る通行人に修理をしている職人の手の動きだけが見える仕掛けが施されています。
人間は不思議なもので、視線を感じない動きに注意を向ける傾向があります。
人前に出るのを好まない職人であっても、この窓の大きさであれば、通行人を気にせず作業に集中できます。
また、こちらの店舗は「高品位」をモットーに掲げているので、手作業の工程が可視化されることが、何よりの説得力となります。まさに店頭演出の妙案と言えます。
お店の入りやすさを考えたときに、「人がいるから入りにくい」のではなく、「人の視線が入りにくくさせている」ことを間違えないようにしましょう。むしろ、人がいなくて、かえって入りにくい印象を与えるお店も多くあります。
大切なのは、お店側による入店する顧客に抵抗感や緊張感を持たせないための配慮です。
従業員の立ち位置は入り口の正面を向いていないでしょうか? また、直立不動で入店待ちをしていないでしょうか?
高級ブランド店や繁盛店では、入店時に顧客を視線が合わないように、常に店内で作業を行うスケジュールが組み立てられ、従業員が気を配り、顧客と視線を合わせるような待機の姿勢をとっていません。これはどの店舗でもできる取り組みの一つです。
また、ハード面でも視線が合わないように一部にすりガラスや格子を利用したりするのも有効です。ただし、すりガラスや格子を利用すると、店内の見通しが悪くなり、開放度や開放感に影響を与えます。
「SHOES & BAG REPAIR」のように(接客する)オープンスペースと(作業する)クローズスペースをバランスよく配置するのも一つの方法です。
人がいることのメリットを最大限に発揮し、入りやすい店舗づくりに取り組んで下さい。