「合わせ技」マーケティングのはなし 1 1Fスーパー、2Fワインバー 成城石井のファン作り

 柔道では、一本では倒せない相手に対して何とかしてポイントを取りに行きます。たとえば先に「技あり」を取り、その後でさらに立ち技や寝技で「技あり」を連取します。そうすれば主審は「技あり、合わせて一本」とジャッジしてくれます。
 マーケティングでも同じ様に2つ以上の戦略・戦術を組み合わせることによってマーケティング目標を達成することがよくあります。

少し前(H26年4月16日)の日経MJの記事ですが、成城石井さんの取組をご紹介しましょう・・・。

高級スーパーの成城石井(横浜市)は昨年末、東京都港区にワインバーを開きました。自社スーパーの2階にあり、実際に店舗に並ぶ食材を使った料理を用意し、100種類以上揃えるワインはほぼ店頭価格で提供しています。同社にとって初の飲食店で、「成城石井の試食コーナー」としてブランドを発信する役割も担っています。

「赤字でもいい。成城石井のファンを作ってくれ」。社長の一声で、ワインバー「ル バーラ ヴァン サンカン ドゥ」は誕生しました。

社内議論を通じて、「我々が得意とするおいしいものを見分けて調達する力を生かそう」と決断し、「世界のおいしい物を現地の価格で提供する」ことを基本コンセプトにしました。

100店を超える成城石井の店舗網を背景とした調達力と、直輸入のメリットを生かしてワインやチーズ、生ハムなどを安価で提供しています。スーパー向けに食材を加工するセントラルキッチンを使うことで、「レバーパテ」なども低価格となるようにメニューを設計したそうです。

ワインバーにとって「メーンメニュー」とも言えるワインもボトル1本2,800円程度からと自社スーパーと同等の価格で提供しています。取締役は「原価率の発想は捨てた」と言い切っておられます。

この結果、高級料理店がそろう麻布十番にあって、客単価4,000~4,500円という「居酒屋価格」を実現しています。

肩肘張らずにワインを楽しめるように内装にもこだわり、客同士の距離を近くするなど南欧のバルの雰囲気を持ち込みました。

ワインはボトルだけでなく、グラスでも多数の銘柄から選べるため少人数での来店にも対応できます。デザートも充実しており、1度の来店では食べきれない品ぞろえに通い詰める顧客が多いそうです。

成城石井の「試食コーナー」としての役割も発揮しつつあります。提供する総菜メニューはスーパー店頭でも用意し、店頭販促(POP)で知らせています。「ワインバーで飲んで気に入り、帰りがけにスーパーに寄って買っていくお客さんも多い」とのことです。

目下の課題は「サービスレベルの向上」です。食品を扱ってきたとはいえ、成城石井はセルフサービスのスーパーです。飲食店としての接客品質の向上が欠かせません。