「合わせ技」マーケティングのはなし 3 IBJの川上から川下への付加価値向上戦略

少し前(H26年3月24日、H26年6月13日)の日経MJの記事ですが、結婚式場運営のテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)さんと結婚相談所大手のIBJさんの取組をご紹介しましょう・・・。

まず、H26年3月24日の記事「婚活から挙式へ紹介」~顧客の希望など引継ぎ~ つまり、川上のはなしからです。

結婚相談所での顧客との打ち合わせの際に結婚式に関する話題を出し、T&Gでの挙式を勧めてもらうものです。顧客に利用を強制することはありませんが、送客に関してはT&Gに限る契約です。顧客が実際にT&Gを利用すれば数%の手数料をIBJに支払います。

T&Gは1組に1人のプランナーを配置し、IBJも顧客に対して1人のカウンセラーをつけています。顧客との信頼関係が築きやすいうえ、希望やイメージについての引継ぎがしやすいそうです。T&Gはハウスウェディングが主力ですが、ホテル運営なども手掛けており、消費者の様々なニーズに対応できます。

一般的に結婚を決めてから挙式までは間が空くため、これまで式場運営会社と相談所運営の会社が提携することはほとんどありませんでした。結婚式場選びは「ゼクシィ」などの情報誌を利用したり、インターネットで調べたりするケースが多く、T&Gも多額の宣伝費を投じてきました。

IBJは年間数千の成婚を実現しており、新たな販路を設けることでより多くの顧客獲得を目指します。

2社の提携で婚活パーティーや街コンといった出会いの場から挙式までを一貫して取り込んでいきます。新婚旅行やその後の趣味、美容など結婚に関連する分野での提携拡大の視野にいれるそうです。

民間調査会社の矢野経済研究所によれば、結婚情報サービスや挙式披露宴、新婚旅行、ジュエリーなどブライダル関連市場は2013年が2兆6,000億円で、高価格帯の婚礼で一部単価の上昇がみられるものの、全体としては横ばいとのことです。早い時期から顧客を囲い込むことで収益を向上させたい考えです。

続きまして、H26年6月13日の記事「妊娠・転職も後押し」~会員向け事業を強化~ つまり、川下のはなしです。

IBJ直営の結婚相談所に登録している会員約3,800人は不妊治療専門のクリニックと提携し、不妊などの健康診断を男女とも無料で受けられるようになります。そのうえで本格的な治療が必要な場合、IBJは会員を同クリニックに紹介します。同サービスを提供することでIBJの付加価値を高め、新規会員の呼び水にする考えです。

今後は保険プランや転職先の紹介サービスも始めます。これらの分野に精通した専属のコーディネーターを配置し、会員に合った保険プランや転職先の情報を提供していきます。契約が成立した場合、先方から紹介料を受け取る仕組みです。

IBJの社長いわく、「結婚相談に応じていると、それ以外の要望も広く把握しやすくなる。会員のライフスタイルに合わせた様々な提案も可能になってきた」と話しています。

人口動態統計によると、日本での婚姻件数は2013年に66万件で減少傾向にあります。このため、会員向け紹介サービス事業の売上高を婚活事業に匹敵するまで成長させていきたい考えです。