「合わせ技」マーケティングのはなし 4 ある業界の「困った」を他業界が「商機・革新・新市場」に!!

少し前(H26年5月26日)の日経新聞朝刊の記事ですが、他の業界の「困った」に着眼し、「組み合わせの妙」が商機につながった取組をご紹介しましょう・・・。

郊外の食品スーパーやファミリーレストランの物件情報を収集している異業種がいます。医療・福祉事業を全国展開する湖山医療福祉グループです。販売効率が落ちてきたスーパー2階の雑貨売り場やファミレスを改装し、デイサービス施設などを開くことを目指し、数社と交渉中です。

駐車場が充実する郊外の商業施設は、高齢者を車に乗せた家族が立ち寄りやすくなっています。ゼロから作るより初期投資が抑えられます。スーパーやファミレス側は賃料収入が見込め、調理部門の稼働率も上がります。

小売業が消費の構造変化に追いつかないことを活用する企業は他にもあります。月に何度通っても定額料金(6千円~7千円台)が人気のフィットネスクラブ「カーブス」は、約1,400店の多くが商店街の空き店舗や、スーパーの不採算売り場を模様替えしたものです。通いなれた主婦らが入会しやすくなるという効果もありました。

ある企業にとっての非効率な分野は、別の企業の商機となります。

300年超の歴史を誇る食品卸大手の国分は、全国のスーパーや中小店に商品を届ける自社物流網を持っていますが、離島や山間地などの小売店への供給は配送効率が落ちるため不得手でした。

これを取り込んだのがヤマト運輸です。ヤマトが張り巡らせた宅配網に、国分がネット経由で小売店などから注文を受けた食品、飲料、日用雑貨を乗せれば翌々日には店にとどきます。決済もヤマトのグループ企業が請負い、国分は商品調達に専念できます。離島でも新製品が都市部とほとんど時差なく店に並びます。「買い物弱者」の支援という側面も持ち、消費者の不便さを解消することにもつながりました。

コンビニでの公共料金の収納代行もこうした例の一つです。80年代、電力料金の徴収を金融機関に依存していた東京電力は現金払いの利用者の扱いに頭を悩ませていました。銀行の営業時間は午前9時から午後3時が一般的な時代で、時間の制約から期日までに支払えない未納者が発生していました。

そこでセブン―イレブン・ジャパンは東電に、請求書に利用者番号や請求金額などの情報が入ったバーコードの印刷を提案しました。店頭で読み取れば普通の買い物と同じように支払いができます。顧客は営業時間を気にすることなく、長時間待たされることもありません。未納率は劇的に下がりました。

セブンイレブンの公共料金や通販などの取扱額はいまや売上高を上回る4兆円超に達しました。収納代行業務の蓄積は世界初のコンビニ銀行、セブン銀行の誕生にもつながりました。

「組み合わせの妙」から生まれるサービス業の革新は多くあります。そこから新市場が立ち上がります。